第二回 GPAの達人たち〜カメラマン前田陽治 玉追いの達人

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GPAの達人たち〜カメラマン前田陽治 玉追いの達人

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彼の起床は早い。太陽が昇るより前に起きるのが、彼の流儀だ。
取材班が「なぜ、まだ暗いうちに起きるのですか?」と、彼に訊いたところ、静かに自分の眼を指差して彼はこう呟いた。
「自分の最大の武器であるこの眼を守る為さ。太陽光線が眼に一番良くないから、眼をゆっくりと太陽に慣らしていくのさ。」
そんな彼の眼には、既に太陽の光が鋭く差し込んでいた。

そんな彼の名は、カメラマン前田陽司。
人は彼をこう呼ぶ
玉追い撮影の達人! 



全米が興奮と狂喜に包まれた2016年11月。彼はその現場にいた。
メージャーリーグベースボール。その全米一を決めるワールドシリーズの現場だ。
彼に任された任務はただ一つ。
「玉を追うこと。」
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多くのテレビカメラマンにとって、野球やゴルフの玉を追う撮影は、決して容易な事ではない。
いわゆる巨匠と呼ばれるカメラマンでも、野球やゴルフの玉追い撮影を任されたら、数秒でもボールを自分のファインダーで捉える事は出来ないだろう。
前田に「玉追い撮影は難しいですか?」という、ちょっとバカにした質問をしてみた。
彼は表情一つ変えずこう言った。「難しいさ。でも、俺には鍛えられたこの眼があるからね。目の前を飛んでいる玉がある限り、それを撮るのが自分の任務。その任務を完遂出来ずにプロのカメラマンと言えるかい?」
取材班は、達人に対してあまりに幼稚な質問をしてしまった事を恥じた。前田は既に自分の使命を悟っていたのだ。

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彼が、現場である野球スタジアムに入るのは、いつも決まって試合開始の6時間前だ。かなり早い。
彼は我々にその理由をこっそりと教えてくれた。
「その日の気温。湿度。風向きや強さ。そして何よりスタジアムの空気感。これによって、玉の軌道がミリ単位でズレるのさ。それを試合前に計算して自分の頭にインプットしておく。テレビ画面のど真ん中でボールを捉えてこそ達人の仕事だからね。」
確かに彼が撮った映像を見ると。定規で測ったかのように、ボールを画面の中心に捉えている。

取材したこの日も、全くミスする事なく彼は8回のホームランボールの玉追い撮影を完璧にこなした。

スタジアムを後にする前田に、取材班は意地悪な質問をしてみた。「今までに、玉追いに失敗した事ありますか?」と。
彼は、その深く透き通った瞳でチラリとこちらに視線を流し、こう答えた。
「自分の中では、全ての玉追い撮影に納得してないさ。視聴者が普通に見ただけでは完璧な玉追い撮影だと思うかもしれないけど、自分の中では100%パーフェクトな仕事をこなせてない。日々鍛錬だね。反省と練習。この繰り返しさ。僕なんかまだまだ達人のレベルではないかもしれない。」
この謙虚な姿勢と、達人にも関わらず日々の反省と練習を忘れていない向上心が、MLB中継チームから絶大なる信頼を得ている理由だろうか。

その言葉を最後に、彼は次の現場に向かう為に愛車のマスタングに乗り込んだ。
次の現場はPGAゴルフだ。ゴルフの玉追いも彼の得意ジャンルの一つだそうだ。彼は明日も確実に仕事をこなすだろう。
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~編集後記~
今回取材した、「玉追い撮影の達人」の前田陽司氏の最も印象的な部分は、その眼だった。
その眼でボールを捉えて、カメラを使って撮影し続ける。ボールを捉えた時の彼の眼は、まるで鷹のような鋭い眼力を放っていた。まるでボールという獲物を捕らえたかのように。



取材班:MK(第一回目と同様に、筆者の妄想と誇大表現がふんだんに盛り込まれています。)

by GPAUSA | 2017-01-14 08:47 | 技術部長 小林正人