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お薦め番組

さいとうたかをの『ブレイクダウン』を読んで、サバイバル術を身につけて、災害時も生き抜かなければならないと思っている山本美和です。(この漫画本、なぜオフィスに? お弁当食べながら読んでいましたが、被害状況の描写が生々すぎました。)

だからって訳ではないですが、好きな番組を紹介したいと思います。その名も『サバイバーマン』http://lesstroud.ca/survivorman/home.php。カナダの番組で、すでに3シリーズが好評の内に終わっているのですが、アメリカでもサイエンス・チェンネルや、ディスカバリー・チャンネルで再放送、ニューエピソード含めて放送中。

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その名の通り、サバイバルしていくリアリティー番組です。しかし、リアリティー番組と言ってあなどれないのです。何がすごいかって、すごい要素はたくさんあるのですが、このサバイバーマンことレス・ストラウド、彼がプロデュースして、構成を書いて、ディレクションして、サバイバーマンとして、自身がサバイバルして、そこまではありそうなものですが、なんと、彼自身で撮影してしまうのです。はい、全部彼一人で撮影してしまうのです。そうそうナレーションもぜ〜んぶ。

我々、テレビ番組制作の仕事をしていると、彼一人で撮影というところに驚くし、興味をもつし、惹かれるのですが、そのすごい部分を知らないまま、一般の人が見ても、とても面白い番組なのです。

彼一人で、世界中の荒野に行き、ほんの少しの限られた物資を持った状態で遭難という設定で、そこで救助を待つ1週間、どう生き延びるかというシミレーションをするのです。本当に彼一人。ただ、万が一のため、衛星電話を携え、遠く離れた場所で救助クルーは待機しています。過去、この救助クルーが動いたのは、悪天候のため救助クルー側の判断で救助した際や、政治的内戦が起こったため、などほんの限られた特殊なケースのみとか。

彼が行く場所は、砂漠、雪山、ジャングル、ツンドラ、森林、北極圏、無人島など。
秘境の地で、身を寄せる避難場所も無い、水や食べものも無い、激しく変わる厳しい天候、獲物をねらう野獣、そして孤独。体力も消耗していく、怪我もつきもの、そして、精神的にも参ってくる。実際、疲労から幻覚をみはじめるっていうシーンもありました。我々が想像しうる世界より、よりリアルで、釘付けです。経験、知識、運、そして体力と精神力でもって、まさしく命をかけたサバイバルショーなのです。
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岩と木の枝を使って、ねずみをしとめ、原始的な方法で火をおこして、そのねずみを焼いて食べたり、アザラシの脂肪を生で食べたり、雨水を蒸発させて飲み水を作ったり、葉っぱを毛布代わりにしたり。物資がありあまる文明の中にあって、この非現実的とも思われる世界に視聴者がひきつけられるのは、何かが起こる、どうにかして生き延びなければならなくなるという不安が、どこかに、あるからでしょうか。

さてさて、その撮影の仕方ですが、ワイドショットあり、クローズアップあり、様々なアングルのショットあり、体にとりつけたカメラによるショットあり、見たい!と思うものをさすがと思わせる画角でちゃんとみせてくれるのです。しかも、彼による細かなサバイバルスキルの説明つきです。これがまた、とてもわかりやすい!加えて、自然にこれでもかと痛めつけられるサバイバーマンの苦痛や苦労が伝わるショットもみせます。けしてサバイバーマンが、泣いたり叫んだりして、その大変さを訴えているのではありません。サバイバーマンはサバイバーマンであるからこそ、常に冷静沈着です。だからこそか、自然の猛威や驚異が伝わる映像になっているのです。

暑い砂漠の中で、遠くを歩く小さなサバイバーマン。これも彼がカメラを設置しそこから歩いて離れていき、また戻ってカメラを回収する。大変だろうなあと思いながらみています。野営地では、彼の活動の様子がわかるよう様々なポジションにカメラを設置します。雨になれば、自分だけでなくカメラも保護もしなければならないのです。どうか起こってくれ!と願う火の種や、命をつなぐ水の一滴にかなり寄ってみせてくれる。どうやって撮ったのだろうと考えさせられるカメラワークもしばしば。25kgあるカメラギアを持ち歩くのも彼自身。我々テレビ人にとっては、おもしろさが何倍にもなる番組なのです。
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いったいサバイバーマンこと、レス・ストラウドという人物は? 1961年カナダ、オンタリオ生まれ。バンドをつくり、ソングライターとして音楽業界にいたらしいのですが、仕事は殆ど裏方でした。番組の中ではハーモニカを携帯し、よく吹いています。荒野のハーモニカがまたしっくりくるのです。たまにギターを持っていて、そのギターを解体して、獲物をしとめるワナをつくるのです。話しがそれましたが、短い音楽キャリアの後、カヌーによる川下りに魅了され、そのままプロのアウトフィッター(荒野のツアーのための案内や食事、野営のサポートをしてくれるひと)や荒野専門のガイド、サバイバル講師になっていったのでした。そう、もともと彼はその道のプロだったのです。

しかし、よく一人で撮影しようという気になってくれました。これがまたカメラクルー引き連れて、行く先でカメラマンがカメラ構えてサバイバーマンを待っていたりしたら、げんなりです。みている人がカメラクルーの食事は?シェルターは?なんて考え始めたらもうリアリティーはなくなってしまいますし。

命をかけた低予算番組です。おすすめです。自然災害の被害も本当に大きくなってきています。自然に対する畏怖は忘れてはなりませんね。

by GPAUSA | 2012-11-25 09:20