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震災日記:海外のジャーナリズム

本日は『最近国内ロケが続いていて、改めて日本って良いな〜』と感じている、
海外事業部のアキラがお送りします。

震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_1724395.jpg3月11日の東日本大震災から早3ヶ月が過ぎました。
ジーピーエー海外事業部では、日頃から海外クリエイターの日本での活動の受け入れを行っているため、私も地震発生後48時間以内には被災地の仙台で海外メディアに同行して取材を行っていました。

今回はイギリスの大手報道番組のチャンネル4ニュース(Channel4 News)をはじめ、カナダのCBC、英国新聞社のデイリーメール(Daily Mail)など、数社とお仕事を共にさせていただきました。

延べ2週間程の取材期間で、改めて海外メディアのジャーナリズムと日本で一般化している報道の手法の違いには驚かされるものがありました。

今回は中でも特に印象的だった、チャンネル4の報道体制についてお話をしたいと思います。


震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_16533657.jpgそもそもチャンネル4とはイギリスの公共放送で、夕方7時から放送されるチャンネル4ニュースは、国内外のニュースを広く深くカバーする事からイギリスの知識層から好まれている報道番組です。

チャンネル4ニュースの報道体制は主にプレゼンター、エディター、特派員(記者)から構成されています。各専門分野に特化した特派員がニュースの現場に赴き取材を行い、エディターが指令塔となって各特派員からの情報をまとめて再編、プレゼンターが持ち寄られた報道内容を元にスタジオ進行を行います。

特筆すべきは、上記に上げられた番組制作スタッフ全員がジャーナリストとしてある程度の自由裁量の発言権を持っており、番組内に自らレポーターとして出演してニュースを伝えることです。。


震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_16531191.jpg今回の震災の取材を例にあげると、チーフ特派員のアレックス・トムソン氏とカメラマンの二人がチームとなって被災地の様子をドキュメントします。移動中の車内では、二人で何をどう伝えるか、そしてレポーターとして何を喋るかなどを議論します。そして、撮影が終わるやいなやホテルでカメラマンが編集も行い、3〜5分のVTRを作ります。最終的にトムソン記者がナレーションを吹き込み、完成したVTRを本土にデータで伝送する。こんなやり方で毎日取材を行っていました。

この間、本土イギリスからは特にコレを撮影しろという様な細かな指示はなく、完全に現場のスタッフがジャーナリストとしてニュースの取捨選択を行い、どのように視聴者へと伝えるのか演出を決定している姿が印象的でした。

ある朝、「おはよう、アレックス。さあ、今日はどんなニュースを取材しに行こうか?」と何気なく聞いたところ、

「アキラ、その発想は違うよ。最初から決められたニュースなんてないんだ。現場に行って僕が見て感じたことを自分の言葉で伝える。それが僕らのニュースなんだよ。」と返されてしまいました。

震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_16532177.jpg普段から日本の報道番組に携わっていた者としては、この発言には正直驚きました。通常、現場に出る前にある程度の構成を考えておくものですが、トムソン記者の場合、今晩の自分の放送枠(持ち時間)は決まっているものの、何を特集するかは現場に赴いてから決めるというのです。

報道の内容が非常に現場レベルのスタッフの主観に左右され、またそれが番組のテイストとなるのがチャンネル4流なのです。

先日、TBS製作のドキュメンタリー『塀の中の中学校』がモンテカルロ賞を受賞しました。
しかし日本の報道番組やそこに出演するアナウンサー/レポーターが外国の賞レースを受賞することは、過去にもなかなか例がありません。一方、チャンネル4ニュースや番組を支えるジャーナリスト達は、モンテカルロを始めとした、世界的にも権威のあるテレビ賞を何度も受賞しています。

震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_1653173.jpg良く言えば日本流のニュース番組は分業制がすすんでおり、非常に効率的な番組制作が可能となっています。しかし外国メディアと比較した時に、日本のテレビ報道にはニュースを伝えるジャーナリスト達の主観は問われる事が少なく、報道姿勢は客観的に「今日起きた事」を伝える事に重きを置いている感があります。

報道するメディアが中立性を貫くために、今の報道姿勢が出来上がったものと思われます。しかし、私が見て来た外国の報道陣は、レポートの最後は自分の名前を読み上げて締めくくる事にプライドを持っているようにすら見えます。海外のジャーナリスト達は、自分の仕事に誇りを持ち、自分の名前を前面に出し続ける事で、視聴者から評価され、また前面に経つ事でクオリティーを更に上げようと常日頃から努力しています。

「日本はどのチャンネルのニュースを見ても、同じような話しかしない…」と視聴者から言われてしまうのは、こういうシステムに起因しているのかもしれません。どちらのやり方が正しいというものではありませんが、外国メディアの報道姿勢を見て、私は強く惹かれる物がありました。

震災日記:海外のジャーナリズム_f0034427_16534568.jpg彼らとまた仕事をしたいと強く思っておりますが、
次はぜひ、もっとハッピーなニュースであればと願っております!

byアキラ

PS 海外事業部のホームページが出来ました!
  自作している為、色々と見にくいところもございますが、
  改良点などあれば、ぜひご連絡ください!!

海外事業部HP: http://kaigai.gpa.jp/fbb

by gpausa | 2011-06-21 17:07 | 海外事業部 伊藤アキラ